平成29年度 ひらめき★ときめきサイエンス
「ニュートリノでひも解く宇宙の謎〜神岡の地下1000メートルで捕まえる究極の光〜」
実施報告

平成29年度日本学術振興会の委託事業のひらめき☆ときめきサイエンス〜 ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI(研究成果の社会還元・普及事業)の プログラムH29024 「ニュートリノでひも解く宇宙の謎〜神岡の地下1000 メートルで捕まえる究極の光〜」が、平成29年8月6日(日)に宮城教育大学 理科学生実験棟 物理学第一実験室で行われました。午前10時より開校式を開き、 11名の中学生と6名の高校生に科研費の紹介と本事業の説明を行いました。 その後、最初の授業である「ニュートリノでひも解く宇宙の謎〜神岡の地下1000 メートルで捕まえる究極の光〜」を実施しました。 今年も、東京大学の秋本祐希さんが作成した素粒子のイメージキャラクター HiggsTan(ひっぐすたん)や4コマまんがを用いて解説しました。


科研費の説明と「ニュートリノでひも解く宇宙の謎 〜神岡の地下1000メートルで捕まえる究極の光〜」の授業

今年のアンケートでは、「とてもわかりやすかった」7名、「わかりやすかった」 8名、「わからなかった・わかりにくかった」2名という結果であり、効果は あったと思われます。しかし、「授業の内容は少し難しかった…」の意見があり、 生徒のみんなにはやはり難しい話だったのかも知れません。 でも、最先端の物理学に触れてもらう良い経験になったと確信しています。

午前の後半は、岐阜県神岡町の神岡鉱山内にあるスーパーカミオカンデとカムランド とテレビ会議を結び、iPadを使って実験現場から生中継をするという企画でした。 スーパーカミオカンデでは、1の方シフトを取っていた中国のTsinghua University の大学院生Linyan Wanさんの協力を得て、スーパーカミオカンデのタンク上面や コントロール室を、通常の見学のような案内を中継して頂きました。丁度、Linac による電子を使った較正実験中で、タンク上面の照明が落とされていましたが、 電子を運ぶ真空パイプや電磁石などを見ることができました。コントロール室では 装置に入射した宇宙線ミューオンの観測の様子が見れました。 また、カムランドでは、東北大学ニュートリノ科学研究センター准教授の古賀真之 先生に普段見学でも立ち入ることが困難なカムランドのタンク上面から中継を 行ってもらい、今秋に装置内に入れようとしているバルーンの製作風景を説明して 頂きました。iPadのカメラを持って自由に動いて撮影した映像は、生徒たちに 興味深く写ったのではないかと思います。 質問タイムでは、生徒から積極的な質問がありました。


ネット見学「カミオカンデ・カムランドをバーチャル見学」

昼食を挟んで、午後は実験@「液体シンチレータを作ろう」を実施しました。 昨年も実施したこの企画では、参加者自らアニソール20mLに蛍光発光剤 であるPPOを100mgとPOPOPを10mgを溶解させて、高性能な液体シンチレータを 調製させるのですが、今年は高精度電子天秤3台としたところ、生徒たちは 珍しそうに見ていました。 参加した中学生・高校生は学校ではほとんど触った経験のない高精度電子天秤 に触れながら、非常に熱心に調製を行っていました。 できあがった液体シンチレータに紫外線を照射すると、液体シンチレータから 青紫の光が輝いてきたのを見て、参加者一同歓声を上げていました!。


実験その1「液体シンチレータを作ろう」

クッキータイムの休憩を挟んで、午後の後半は実験A「ホコリの中の邪魔者を探せ」と 題して、簡易霧箱を使って放射線を観測しました。昨年同様、ラジウムボールや ランタンマントルから放出されるラドン(トロン)の娘核からアルファ線が作る霧 の様子を、中学生・高校生は興味心身に観測していました。そして、最後に横の 実験室で3時間くらい吸引していた濾紙を切取り、参加者に配って観察しました。 昨年から導入した原子力発電所でも使用されているダストサンプラーを使用した ため、空気中のホコリの収集力が上がり、十分にアルファ線を観測することが できました。汚れた濾紙の表面からアルファ線が出ている様子を見た中学生や 高校生に、空気中のホコリの中に自然の放射性物質が含まれていることを説明 すると、とても驚いている様子でした。


実験その2「ホコリの中の邪魔者を探せ」

   最後に、参加者全員に修了証書を手渡して本プログラムを終了しました。 プログラム終了後に、生徒から「液体シンチレーターはどういうところ で使われるのですか?」と熱心な質問がありました。なるほど、科研費で 開発しているものが、生活のどのようなところで使われているのか疑問 になったのかもしれません。今年の生徒は、一見積極的ではないのかと 思われましたが、生徒のアンケートを見ると、「プログラムはとても おもしろかった」との意見が12名から頂き、将来自分も研究者になり たいという意見が7名もいたことが最大の収穫でした。素粒子という 最先端物理学に興味を持ってもらえたようで、大変有意義な企画になった と思います。


「クッキータイムと修了証書授与、お疲れ様でした!」

(文責:宮城教育大学・教育学部・教授 福田善之 平成29年8月12日)