平成28年度日本学術振興会の委託事業のひらめき☆ときめきサイエンス〜
ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI(研究成果の社会還元・普及事業)の
プログラムH28019 「ニュートリノで探る宇宙の謎〜地下深くで究極
の光を捕まえる〜」が、平成28年7月31日(日)に宮城教育大学 理科学生実験棟
物理学第一実験室で行われました。午前10時より開校式を開き、15名の中学生
と3名の高校生に科研費の紹介と本事業の説明を行いました。その後、最初の授業
「ニュートリノで探る宇宙の謎〜地中深くで究極の光を捕まえる〜」
を実施しました。
昨年度のアンケートでは、内容が難しいとの意見があったことを踏まえ、
東京大学の秋本祐希さんが作成したHiggsTan(ひっぐすたん)という
キャラクターや4コマまんがを用いて解説しました。そのおかげもあって、
今年のアンケートではよくわかったとか、もっと高度でも良いとの
頼もしい意見が目立ちました。生徒たちにとって、私の研究である
2重ベータ崩壊の現象と物質だけが残った宇宙の謎との関連も含め、
最先端の物理学に触れてもらう良い経験になったと確信しました。
「ニュートリノで探る宇宙の謎〜地中深くで究極の光を捕まえる〜」の授業
午前の後半は、岐阜県神岡町の神岡鉱山内にあるスーパーカミオカンデとカムランド
とテレビ会議を結び、手持ちカメラを使って実験現場から生中継をするという世界初
の企画をしました。スーパーカミオカンデでは、1の方シフトを取っていたCalifolnia
State University, Dominguez Hills校のJames Hill氏の協力を得て、スーパーカミオカンデ
のタンク上面やコントロール室まで、通常の見学のような案内を中継して頂きました。
また、カムランドでは、東北大学ニュートリノ科学研究センター准教授の古賀真之氏が
普段見学でも立ち入ることが困難なカムランドのタンク上面から中継を行ってもらい、
今まさに装置内に入れようとしているバルーンの製作現場を説明して頂きました。
カメラを持って自由に動いて撮影した映像は、生徒たちに臨場感のある興味深い印象を
与えたのではないかと思います。
ネット見学「カミオカンデ・カムランドをバーチャル見学」
昼食を挟んで、午後は実験@「液体シンチレータを作ろう」を実施しました。
昨年も実施したこの企画では、参加者自らアニソール20mLに蛍光発光剤
であるPPOを100mgとPOPOPを10mgを溶解させて、高性能な液体シンチレータを
調製させるのですが、今年は電子天秤の数を4台に増やしたことから、スムーズ
に進行することができました。参加した中学生・高校生は学校ではほとんど触った
経験のないピペットや電子天秤に触れながら、非常に熱心に調製を行っていました。
できあがった液体シンチレータに紫外線を照射すると、青紫に光輝いた液体シン
チレータを見て、参加者一同歓声を上げていました!。
実験その1「液体シンチレータを作ろう」
クッキータイムの休憩を挟んで、午後の後半は実験A「ホコリの中の邪魔者を探せ」と
題して、簡易霧箱を使って放射線を観測しました。通常のラジウムボールやランタン
マントルから放出されるラドンガスの娘核からアルファ線が作る霧の様子を
参加した中学生・高校生は興味心身に観測していました。そして、最後に横の実験室で
吸引していた濾紙を切取り、参加者に配って観察させてみました。今回は、新たに
原子力発電所でも使用されているダストサンプラーを購入し、空気中のホコリの収集力を
上げました。汚れた濾紙の
表面からアルファ線が出ている様子を見た中学生・高校生は、とても驚いていました。
空気中のホコリの中に自然の放射性物質が含まれていることを説明すると、さらに
驚いている様子でした。
実験その2「ホコリの中の邪魔者を探せ」
最後に、参加者全員に修了証書を手渡して本プログラムを終了しました。参加者の
アンケートからわかりましたが、授業の内容は昨年度と変わらないにもかかわらず、
キャラクター等を使った説明のお陰で、参加した中学生・高校生に概ね理解して
もらえたことが最大の収穫でした。終了後に、保護者の方から感謝とご子息の
興奮した様子が伺えるメールを頂きました。素粒子等の最先端物理学に大変興味を
持ってもらえたようで、大変有意義な企画になったと思います。
「修了証書授与、お疲れ様でした!」
(文責:宮城教育大学・教育学部・教授 福田善之 平成28年8月11日)